凍害について
画像引用:道路構造物ジャーナルNET
凍結すると水は体積膨張する。体積膨張率は自由膨張で9%。
コンクリートのひび割れは、膨張か収縮で発生する。
凍結すると体積膨張によりひび割れが生じる。
凍害は、初期凍害と凍結融解の繰り返し作用の二つに分けられる。
初期凍害
硬化初期(施工初期)に凍結することにより、セメント水和組織が膨張圧で破壊される。
凍結融解の繰り返し作用による凍害
コンクリートが十分硬化した後、凍結と融解を繰返した際にひび割れが発生。
以下、凍結融解の繰り返し作用による凍害について説明。
凍害のメカニズム
コンクリートが十分硬化した後、凍結と融解を繰返した際にひび割れが発生するのが凍害。
1. 大きな空隙から凍結(このときの空隙内の膨張圧は大きくない)
2. 水が小さい空隙に逃げる
3. 小さい空隙の水が凍結する (このとき凍結膨張率9%の膨張圧を緩和する空隙が存在しない。つまり、膨張圧の逃げ道がない)
4. 膨張圧がコンクリートの引張強度を超えるとひび割れが生じる
5. 4を繰返すことでひび割れが進展し、スケーリング等が生じる
凍害を受けやすい場所は?
凍害を受けにくい場所と受けやすい場所があります。
凍害は上記の通り、コンクリートが十分硬化した後、
凍結と融解を繰返した際にひび割れが発生するため、 凍結したままの場所は凍害が発生しにくい。
逆に、凍結と融解を頻繁に繰り返す場所にはひび割れが発生しやすくなる。
例えば、 日が当たりにくい北面などは、凍結したままなことが多いので凍害を受けにくい場所とされている。
逆に、下記の場所は夜間に凍結、日中に融解される場所の代表例であり、凍害を受けやすい場所と言える。
建築 | 軒先、ベランダ、パラペットなどの突出部 |
土木 | トンネル抗口部、道路橋、擁壁、水利構造物、ダム |
凍結融解の繰り返し作用による凍害の劣化現象
凍害の劣化現象には、スケーリングとポップアウトがある。
代表的現象のスケーリング(表面ひび割れ)
スケーリング(表面ひび割れ):コンクリート表面がポーラス(多孔質体)になり、表面の含水率が高くなると劣化が進行しやすくなる
鋼材腐食:スケーリングが進行すれば鋼材腐食の可能性がある
ポップアウト
画像引用:日経XTECH
骨材が含む水が凍結し膨張することで、コンクリート表面を圧迫し、表面剥離を生じる。
骨材そのものの吸収率に大きく影響を受ける。
凍害によるコンクリートの劣化
凍害によるコンクリートの劣化要因は下記の通り。
耐凍害性の低い骨材の使用
空隙の多い骨材を使用すること。 空隙の多い骨材は空隙に水分が浸入しやすくなり、凍結融解を繰返しやすくなる。 逆に密な骨材は、水が浸入しづらくなることにより耐凍害性に優れる。
空気量が少ない
空気量が少ないと、水分の凍結による膨張圧の逃げ場(クッション)が少ない。
海水の作用と凍結融解作用の複合作用
常に海水に接していない飛沫帯は、乾燥と湿潤が繰り返し起きる。
そのため、凍結融解の繰り返しなので劣化が著しい。
また、海水中に含まれる塩化マグネシウムや塩化ナトリウムによって硬化体中のカルシウム分が溶脱する。
カルシウム分が溶脱することにより表面がポーラス化し吸水しやすくなる。 そのためコンクリートの含水量が増え、凍結しやすくなる。
なお、凍害によって塩害に発展することがある。 塩水が凍結すると塩分は水圧により内部に移動する。
局部的に塩分濃度が高くなると、不動態皮膜が破壊され、塩害が発生する。
凍結防止剤による凍害
上述の海水と同様に、凍結防止剤の塩化物がカルシウムを溶脱させる。
カルシウムが溶脱することにより表面がポーラス化し吸水しやすくなるため、コンクリートの含水量が増える。
含水量が増えると表面の押上現象を生じさせる。 凍結防止剤はスケーリング(表面ひびわれ)を助長させる。
表面がポーラスになり、表面の含水率が高くなるとスケーリングが進行しやすい。
※凍結防止剤の種類は塩化物系と無塩化系がある。塩化物系の主なものは塩化カルシウムや塩化ナトリウム。
凍害の対策
凍害の対策を以下に示す。
・空気量を大きくする。
3%を境に耐凍害性は向上。 ただし、空気量1%増加することで強度は5%低下するため、コンクリート強度を損なわない程度で空気量を多くする必要がある。
・AE剤を使用し、気泡間隔係数を小さくする。
同じ空気量でも気泡間隔係数が小さいほうが良い。 気泡径の小さい良質のエントレインドエアであれば気泡間隔係数も小さく、かつ、振動による抜けも少なくてよい。
気泡間隔係数とは 硬化コンクリートの凍結融解性の優劣を判断する重要な指標。試料中のすべての気泡がセメントペースト中に単純立法格子に配列された等大な球であるという仮定のもとに計算されている。気泡表面からセメントペースト中の点に至る最大距離に関連する量で、200μm程度にすることでコンクリートの耐凍結融解抵抗性が著しく向上する。測定方法は、ASTM C 457に規定されたリニアトラバース法または修正ポイントカウント法が最も一般的に用いられる。 引用:https://www.weblio.jp/content/%E6%B0%97%E6%B3%A1%E9%96%93%E9%9A%94%E4%BF%82%E6%95%B0
・耐凍害性の大きい骨材を使用する
相対動弾性係数80%以上が耐凍害性を有する。
・密実なコンクリート
セメント水比が大きいほど耐久性指数は大きい。
・水が構造物に滞留しないようにする
水切り、水勾配を工夫する。