とうとう開幕した2020年のF1

コロナ禍で生活や世界が一変してしまった2020年、いかがお過ごしでしょうか?

普段の生活のみならず、世界中のあらゆるイベントもコロナ禍の影響を受けて変更を余儀なくされていますね。

私の大好きなF1も私が見始めた1990年以来、初めて春から始まるシーズンが中止され、ようやく73日のオーストリアGpからの開幕となりました。

 

無観客で夏からのスタートとなるF1はもちろん生まれて初めてですが、始まってみれば少し奇妙な感じはあるものの、やっぱり無茶苦茶面白いです!

もしかして私、もう好きでなくなってしまっているかも?と離れ離れになっている間、

勝手にもじもじと恋する乙女のような心配をしていましたが、完全なる杞憂でした。

 

チーム戦、エンジニアリングの桃源郷としてみるF1の魅力

 F1の魅力といえば、やはり何よりもF1ドライバーが繰り広げるサーキット上でのバトルですよね!

世界で20人しかいない職業としてのF1ドライバー。

そこにたどり着くまでの途方もないドラマを背景としてのサーキット上でのバトルは、人々を熱狂させます。

 

またF1には他の魅力もあります。

それは通常の市販の技術領域では考えられないような莫大な開発資金を、

「少しでも速く走れる車」に投入することを許された技術の桃源郷といった側面の技術開発です。

 

私の主人も一般の市販製品のエンジニアをしていますが、ある技術開発に投資する場合、

必ず投資効率が求められ、毎日毎日うんうん唸って、鉛筆なめなめ神経をすり減らして仕事をしています。

 

技術開発の最初から最後まで、

「この技術を開発して商品に採用した場合、その商品はどれくらい売れて、技術開発に投資したお金は回収できますか?」

という問いが経営者側から確認され、費用対効果(苦労対効果)が悪いものは、どんどん淘汰されていきます。

 

基本的にはF1でも同じ確認行為はなされているはずですが、その額がもう本当に超高額で、半端ないんです。

一般企業の感覚でいくと

「金に糸目はつけない、アイデアも自由。とにかく1年以内に0.1秒でも速く走れる車を考えて作ってもってこい」

といったような分かりやすいお題と、F1のエンジニアリングは向き合っています。

 

ここで、ざっくりとF1チームの規模感ついて書いてみますね。

F1チームと呼ばれる会社はチームによってまちまちですが、下位チームでも5060人、上位になると4500人規模のチームもあって、平均すると1チームざっと300人といったところです。

F1チームが1年に使う予算は、2015年のデータを見てみますと下位チームで115憶円、上位になると約650億円となっています。

…いやあ、本当に…上位、下位チームのでの差もさることながら、その額の大きさに驚かされますよね。

 

次に、上位チームにしぼって、このお金の内訳をざっくりとみていきましょう。

500人チームで、年間予算が約650億円。この内訳は?

 650億円の資金調達元の内訳:スポンサーやパートナー収入が、420億円、テレビ放映権やF1からの配分金で、約230憶円

 650億円の資金支出の内訳:人件費としてドライバー契約50憶円、ドライバー以外の人件費140憶円、参戦運営費用5億円程度で、残りが460憶円

 

CEOやチーム監督、技術統括責任者には、億単位の年収が支払われます。

またF1のエンジニアには、流体光学、機械工学、燃焼工学、電気工学、最近ではハイブリッドやターボの導入で、必要な技術領域の枠も広がっています。

各専門技術分野のその道の一流の設計者、技術者が集まっているんです。

ケンブリッジやオックスフォード、ロンドンなど有名大学卒の専門スタッフ(当然、専門職に相応しい高給が支払われる)がゴロゴロしています。

メカニックでも、Gpを転戦する『レース担当』ともなれば、日本の大卒初任給の数倍の収入を得ている人はざらです。

ドライバーだけでなく技術課発、レース実行をする人材も、世界最高峰の人材を集めているまさにドリームチームって感じですよね。

技術関係者の人件費をざっと幹部クラスが年収1憶円で50人、それ以外の人材を年収2千万円で450人で計算すると、合計140億円になります。

人件費を除くと残り460億円

これらがチーム運営に使われるお金になります。

ここから、チームが年間Gp中に戦う世界各地のコースを転戦していくために必要な費用がまず必要となり、ざっと多めに見積もって5憶円程度でしょうか。

残りの455億円は、1年で10台以下の生産をするF1カーの開発、製造、メンテナンス費用ということになります。

また技術パートナーが自前で開発資金を持ち込むような場合は、ここに追加の開発資金がつぎ込まれていることもあります。

1年間の中で必要となる風洞設備、加工設備、テスト設備、シミュレーション関係のソフトなどの設備投資も継続して行わないといけません。

 これらの数字は各チームでかなりばらつきがあって、また年代によっても違いはあるのですが、

毎年、1台あたり45.5億円もつぎ込める車を開発、設計できる世界なんですよね。

 

どれほど仁義なき、お金に糸目をつけない競争が、“ただ早く走るため”に費やされているのか分かるかと思います。

無駄とみることもできますが、エンジニアからすると、こんなにやりがいがあって結果の分かりやすいフィールドは、

他の職業には無いし、まさにエンジニアの桃源郷といえるのではないでしょうか?

 

近年F1チームの運営費用があまりに高すぎて、参加チームが少なくなり、F1本部としてルールに投資金額の上限を設けるという動きが始まっています。

2021年からは156億円程度になります。それでも一般人からすると大きな額ですが…。

お金の話ばかりしていますが、私が伝えたいのはF1という世界は「かなり純度の高い技術開発のフィールドだ」ということです。

 

下位チームの開発予算が少ない中、非常に優れたアイデアを開発し、いきなり上位チームを食ってしまうといったようなことが、頻繁ではありませんが起こります。

エンジニアリングの発想一つで、局面をひっくり返すこともできます。

こういったことがおこると非常に面白いです!

 

例えば、

1976年にティレルがP34に導入した6輪車

1977年にロータスが78で導入したグラウンド・エフェクトカー

1989年にフェラーリが640に導入したパドル式セミオートマ

1990年にティレルが019に導入したハイノーズ

1983年にロータスが92で投入させ1992年のウィリアムズFW14で集大成となったアクティブサスペンション…。

 

今年ですとメルセデスがW11に導入しているDAS(デュアル・アクシス・ステアリング/2軸ステアリング)があります。

メルセデスに搭載されているDASはどういう仕組みかというと、ハンドル自体を手前に引いたり、

押し込んだりすると前輪のタイヤの角度が変わるという仕組みのものです。

カーブの時、直線の時の、それぞれの状態に適したタイヤの角度をドライバーが調整しながら走ることによって、より速く走ることができるようになります。

参考動画があるので、ぜひご覧ください!

名前だけだと伝わらないかもしれませんが、これらはアイデアが優秀でこのアイデア一本でチームを一気に優位に立たせることのできる技術アイテムです。

 

これらの優れたアイデアで成功するとF1チームの成績は一気にあがり、比例して収入もあがって、チームの順位が一気に逆転ことになります。

またこのアイデアを生み出したエンジニアたちは、F1ドライバーと並んで英雄扱いとなります。

コーリン・チャップマン、ゴードン・マーレ―、ジョン・バーナード、エイドリアン・ニューウェイといった人々は偉人として歴史に名を残す存在です。

もう、本当に、めちゃくちゃかっこいいです!

 

またこれらの技術は、あまりに優秀すぎると、速すぎて危険である等の理由が付けられてF1では禁止になることもあれば、

逆に、他のチーム皆が真似をしてF1のデファクトスタンダード(事実上の標準)になるものもあります。

運営側の匙加減にファンも毎回ドキドキさせられます。

 

ちなみに、これらは“効率よく速く走る“ことの究極の技術ソリューションでもあるので、

導入コストが低く抑えられる場合には、ロードカーなどの一般市場に適用されていくこともあります。

私たちが運転する車にも、F1の技術が反映されていくんです。

想像するだけで、私もF1ドライバー気分に!

 

日本のホンダの挑戦、分かりやすいドリームが、シンプルに熱い!

このような技術の桃源郷であるF1チームの争いに、我らが日本のホンダも参戦しています。

長いF1の歴史でみると、最初にF1にチームとしてチャレンジした日本企業は1964年ホンダでした。

その後2002から2009年にトヨタ、2006から2008年スーパーアグリといった企業からの参戦もありますが、F1の日本企業といえばなんといってもホンダです。

ホンダはF1チームとしては1964年から1968年、2006年から2008年で参戦しながら、

F1のエンジンサプライヤーとしても1983年から1992年、そして2015年から今にいたるまで参戦しています。

 

その参戦時期の順番から、今は「第4期」と言われています。

これほどまでにF1にこだわる日本企業は他にはなくて、こんなにお金のかかるF1というものに継続して挑み続けるホンダの姿勢からは、

企業の収益性重視というよりも、会社のDNAそのもの(技術の桃源郷という側面でのF1というフィールドに魅せられてしまった)を強く感じます。

 

見ている側としてはホンダの姿勢はとっても魅力的です。

「技術で勝ってやる!勝つまでやりきる!」という姿勢が、ひしひしと伝わってきます。

事実、第1期から第3期までグランプリで勝利せずに撤退した期間はありません。

4期の現在は、2015年からはマクラーレンにエンジン供給(今はハイブリッドのエンジンなので“パワーユニット(PU)”といいます)の形でスタートしますが

全然いいところがないまま、3年間を過ごします。

供給チームを2018年からトロロッソに変えて、そこそこの成績を残し、2019年からトロロッソの兄弟でいうところのお兄さんチーム、レッドブルにもエンジンを供給し初めています。

 

そしてついに、2019年の第9戦オーストリアGpで第4期発の優勝を飾るのです!

そこにいたるまでのホンダのエンジニアの方の努力や葛藤を思うと、本当に涙がでるものがあります。

 

前述のように湯水のようにお金を使いながらもまったく結果がでない4年間、そしてF1のホンダという重圧(参戦期間全てで優勝してきたという歴史)。

しかも、ホンダという企業のサラリーマンでもあるので、会社の中ではとても形見の狭い思いをされたことかと思います。

 

これらのことに約4年間ずっと耐え続け、「技術で勝ってやる!勝つまでやりきる!」を愚直にやりとおし、

その結果、ついに勝利を掻っ攫ったときのあの感動は、いまでも鳥肌が立ちます。

 

実は私の知人はホンダ勤務で、この第4期当初からこのプロジェクトに参加し、世界各国を転戦しています。

彼のこの苦労を思うと、本当に「よかった!感動した、おめでとう!!」と小泉前首相ばりに声をかけてあげたくなっちゃいます。

 

そんなホンダは今、次なる目標である年間チャンピオンに向けて、コロナの中2020年シーズンに臨んでいます。

レッドブルと名前がトロロッソからアルファタウリに変わった2チームにPU(パワーユニット)を供給しています。

今年のホンダPUもすごいですよ。

詳細を解説した動画があるので、ぜひご覧ください。

 

チャンピオンを争う相手は、王者メルセデスと同じく対抗馬のフェラーリあたりでしょうか?

2戦を終えた現段階では、メルセデスがW11に導入しているDASがよほど優秀なのか、

メルセデスの車が一歩抜きんでているようでレッドブルなかなかの苦戦をしいられていますが、

「技術で勝ってやる!勝つまでやりきる!」の信念を貫き、粘り強く、物分かりの悪い挑戦を続ける姿を厚くファンとして見守っていこうと思います。

是非一緒に日本企業、ジャパニーズサラリーマン、ホンダを応援しましょう!

関連記事はこちら↓