私が妊娠したのは結婚してから半年が過ぎた春。

とても嬉しかったことを覚えています。

妊娠検査薬が使えるタイミングより早くから始まったつわりは日に日に酷くなり、ほとんど食事が摂れていない状態での立ち仕事。

職場では最近、妊娠を機に退職した先輩がいること、私より少し早くに妊娠が分かった同期の子が、医師から自宅安静を言い渡されて長期間休んでいることもあり、なかなか辛いと言い出せない雰囲気。

休んでいる同期の子の埋め合わせのために、同じく妊婦である私があちこち駆け回るような状態でした。

そんな状態で仕事をしていたため、すぐに心も体も限界に。

体重は5キロ落ち、尿検査をしたらケトン+++

里帰り出産をする予定だったため、通っていた病院に入院施設はなく、先生も「働いた方が気がまぎれるだろう」と言って診断書ももらえない状態。

職場では、「私が産休に入った後の後任が見つかったよ。経験者だから引き継ぎも必要ない。あなたの産休までの配属先がなくなっちゃったんだけどどうする?」なんてストレートなマタハラをされて、妊娠4カ月目に退職しました。

ストレスや過労が原因だったのか、退職してからすぐにつわりは治まり、心も体も徐々に回復していきました。

体調が良い日は夫とベビー用品を買いに出かけたり、産まれたらなかなか行けないから、と言ってオシャレなレストランでランチを食べたり。

夜はベッドで「赤ちゃんの名前、何にする?男の子かな?女の子かな?」と、毎晩話しながら眠りました。

妊娠中の経過は順調そのもので、妊娠34週で実家に里帰り。

41週4日で、3256gの女の子を出産しました。

産まれてきた赤ちゃんはちょっとおかしい!?

出産した翌日から始まった母子同室。

ありがたいことに、母乳はしっかり出てくれて、娘も吸うのが上手。

ただ、しっかりゲップをさせても必ず嘔吐する娘。

心配になって助産師さんに聞いたら、「出産時に羊水をたくさん飲みこんでしまったため、ちょっと嘔吐が多いです。少ししたら治まりますよ。」と言われました。

嘔吐の回数は減るどころか日に日に増えていきました。

授乳前後で体重を測って哺乳量を調べると、とてもたくさん飲めているのに、その後大量に嘔吐するため体重はほとんど増えず。減ってしまう日もありました。

うんちも、回数は普通の子と同じなのに、出る量はほんの少しだけ。

時々、助産師さんから綿棒浣腸をしてもらっていました。

1日10回以上もある大量嘔吐、体重も増えないので、担当の助産師さんが変わる度、同じ質問を繰り返す毎日。

退院前夜、いつもは夜泣きしない娘が1晩中泣き続けました。

嘔吐したものを見ると、色が黄緑色!!

びっくりして、助産師さんに見せにいきました。

1時間程助産師さんに様子をみてもらいましたが、その後嘔吐はなかったので、「泣きが激しい子だから、弾みで出てしまったのだろう」と言われて部屋に戻りました。

翌日、退院時診察を無事にクリアした娘と退院するために準備をしていたところ、ベテランの助産師さんから声をかけられました。

「退院時診察は問題なかったけれど、嘔吐のことも、体重が増えないことも不安なまま帰ってしまったら、この先ずっと不安が解消されないままになってしまうよね。退院が午後になってしまうかもしれないけれど、小児科の先生を呼んでいるから、原因を詳しく調べてもらったらどうかな?」

二つ返事でお願いしました。

嘔吐の原因は腸回転異常症

すぐに小児科の先生が到着し、診察をしてもらいましたが、すぐには原因が分からず。

非番だった技師さんを呼んでもらい、普通新生児にはしないレントゲン撮影をしてもらいました。

すると、大腸に不自然な膨らみが。

先生から、「説明したいので、ご両親だけ来てください」と言われ、里帰り出産の為、夫はいなかったため、私一人で診察室にいきました。

そこで、「まだ確定診断はできないのだけれど、腸回転異常症だと思っています。その場合、緊急手術が必要です。」と告げられました。

腸回転異常症とは

腸回転異常症は、腸に起こる先天性の疾患です。

発生確率は5000~10000人に1人。中でも男の子に患者が多く、女の子は男の子の半分くらいしかいないそうです。

原因は不明です。

妊娠3か月~4カ月ころ、お母さんのお腹の中で、胎児の腸がつくられます。

その時に、腸はくるくると回転しながらつくられていくのですが、なんらかの原因で、その回転が止まってしまうことがあるそうです。

そうすると、お腹の中で腸が上手く固定されずに、ぐちゃぐちゃになったまま産まれてきてしまいます。

それが腸回転異常症です。

固定されていないので、腸はお腹の中で動き、捻じれたり、絡まったりしてしまいます。

すると、食べたものが腸の中を通過できなくなる、腸閉塞状態になってしまい、うんちが出なくなったり、逆流して、嘔吐してしまったりする症状がでてきます。

腸閉塞状態が続くと、腸の血流が悪くなり、腸が壊死していきます。

治すためには、一刻も早く手術をして、捻じれたり、絡まったりしている部分を解き、壊死している部分があれば切除し、腸をできるだけ捻じれないような位置に配置しなおさなくてはなりません。

壊死してしまった部分が多ければ多いほど、術後の状態が悪くなります。

栄養の吸収もできなくなってしまうので、ほとんど食事がとれず、一生点滴を打ち続けることになる子もいるそうです。

私が出産した病院は、地元では一番大きな病院で、小さい子どもの手術ができる、小児外科や、新生児集中治療室(NICU)が完備されている病院でした。

その日の夕方、生後6日の娘は麻酔をかけられ、手術室に入りました。

娘が病気なのはなぜ?私にできることは?

娘が手術を受けている間、スマートフォンで娘の病気についてひたすら検索をかけながら、娘の腸が回転を止めてしまった妊娠3~4カ月の頃のことを考えていました。

つわりで食事が摂れず、フラフラだった。

職場で辛いと言えず、無理して働いていた。

マタハラを受けて、ストレスが溜まっていた。

原因が分かっていないということは、どれが原因であってもおかしくないってこと!?

手術が終わるのを待つため、特別に入院を1日延長してもらって、病室でひたすら考えました。

健康に産んであげられなかったけれど、私が娘にできることはなんだろう?

娘の手術は聞かされていた時間よりもかなり早く終わり、執刀医で、その後娘の主治医となる先生から説明を受けました。

「早期発見できたから、腸の壊死はなかったです。とってもきれいなピンクの腸でしたよ!お母さんが入院中、しっかり見ていてくれたおかげですね!1か月くらい入院が必要ですが、その後は食事も生活も、普通の子とまったく同じですよ。母乳も好きなだけ飲めるようにして退院させますから安心してくださいね!」

そう言って、手術中に撮影した娘のきれいな腸の写真を見せてくれました。

翌日、私は一足先に退院。

「今後、お母さんには搾乳を頑張ってもらいます。母乳を届けにできるだけ毎日面会にきてあげてください。まだ飲めませんが、3日もすると少しずつあげられるようになりますよ!あとはおむつを替えたり、沐浴したり。面会に来たタイミングでできるだけお世話してあげてくださいね。腸の動きが止まると、手術したところが癒着してしまうかもしれないので、毎日浣腸して腸を動かします。退院後もしばらく続けるので、浣腸のやり方をマスターしましょう!」

先生のこの言葉で、「娘の面会に毎日行くこと」「娘がミルクを飲まなくていいくらいたくさん搾乳すること」「退院までに浣腸をマスターすること」が私の目標になりました。

娘の経過と退院

娘は驚異的なスピードで回復していきました。

術後3日で母乳をほんの1口飲ませてもらえるようになってから、母乳が欲しくて泣き叫び、看護師さんを困らせたり。

「まとまった量が飲めるようになってきたから、面会にきた時は直接おっぱいからあげて良いですよ。」

と言われたら、短時間で指示された量の3倍飲んでしまったり。

最低3週間は入院と言われていたのに、あまりにも元気なので2週間で退院してしまいました。

ただ、困ったことが1つ。

入院中は出ていたうんちが、退院後、一切出なくなってしまったのです。

突然始まった頑固な便秘!どうする?

入院中は1日3回浣腸をして、その他にも自力で2回ほど出ていたうんち。

「退院後は1日2回の浣腸でいいですよ。ただ、お腹が張ってきたら綿棒浣腸をしてあげてくださいね。」と言われ、実家に連れ帰ってきたら、自力で1度も出ない…

浣腸をすると出るのですが、やっぱりお腹の中にはうんちが溜まっているようで、数日するとお腹が張り、その度に綿棒浣腸をするようになりました。

受診する度に先生にうんちの回数や量を報告。

体重が増えたので、浣腸液を使う量も1回3mlから4ml、5mlと徐々に増やしていきました。

浣腸を使う時間帯を揃えることで、排便のリズムがつき、出やすくなるときいて、なるべく同じ時間に浣腸するようにしました。

しばらくして、新生児訪問の助産師さんが来てくれました。

病院の方から手配してもらった助産師さんなので、娘の事情は全てわかってくれている方です。

そこで、娘の便秘について質問したところ、

「お母さんは便秘してない?母乳の原料はお母さんの血液だから、お母さんが便秘していると母乳を飲む赤ちゃんも便秘がうつるよ!」と言われました。

当時、たまたま便秘はしていませんでしたが、妊娠前から私は便秘になりやすい体質でした。

進学や引っ越しなど環境が変わった時、忙しい時、悩みがある時、食事が不規則になったとき、心あたりはないけれど、急に便秘になることもありました。

母乳はお母さんの血液からできるとは知っていましたが、正直それで便秘までうつるとは考えもしませんでした。

半信半疑でしたが、娘が母乳を飲んでいる間は、絶対に便秘しないようにしよう。と決めて、水分をたくさん摂るようにしたり、野菜を食べる量を意識的に増やしたりしました。

頑張った甲斐があって、私は便秘になりませんでしたが、娘の便秘は治りませんでした。

むしろ、次第に悪化していき、お腹が張ってきて綿棒浣腸をしても出なくなってしまいました。

転院。新しい主治医との出会い

生後3か月になるころ、里帰りから自宅に戻り、自宅に近い病院に転院しました。

初回の診察で新しい主治医の先生と、今までの治療のこと、今不安に思っていること、今後の治療ことについて話をしました。

前の病院の先生が書いてくれた紹介状を見ながら、とても細かいところまで質問してくれる先生の様子から、良い先生に巡り合えたと感じました。

便秘のことについて聞くと、

「これくらいの子の便秘は心配だろうけれど、なにかのきっかけで急に解消することが多い。今はまだ母乳しか飲んでいないし、運動量も少ないけれど、離乳食を食べ始めたり、寝返りを始めたり、と成長するにつれてほとんどが治る。浣腸しても出ないなら問題だけど、出ているし、お腹の張りもそれほど酷くないから大丈夫!」

まれに肛門の位置がおかしくて、うんちが出しにくくなる、鎖肛という状態になっている場合があるそうで、娘の肛門も見てもらいましたが、全く問題なし。

むしろ先生が肛門を見てくれている時に大きなおならをして、「元気だよー!」とアピールしてくれました。

これまでは「この頑固な便秘を治すにはどうしたらいいんだろう…」とばかり考えていました。

しかし、先生の言葉を聞いて、「便秘を解消する努力はするけれど、すぐに結果がでなくても大丈夫。娘が出せるようになるまで待とう!」と考えるようになりました。

受診のペースは3か月に1回。

その都度身長、体重を測り、浣腸液の量を調節しました。

浣腸を始めたばかりのころは1回3mlしか使わなかったのに、気づけば1回15mlも使うようになっていました。

娘の便秘は離乳食が始まっても、ハイハイやつかまり立ちが始まっても、離乳してもなかなか治りませんでしたが、焦りはあまりありませんでした。

自治体の乳幼児健診の時には、保健師さんや栄養士さんに便秘に良い離乳食について質問し、リンゴやミカンの果汁が良いと聞けば毎日お風呂上りに与えました。

食事の量が増えれば出やすくなると聞けば、離乳食のバリエーションを増やして、娘が飽きずにたくさん食べられるように工夫しました。

腸の形が普通と違い、のの字マッサージは効果がないと聞いていたので、術後に聞いた娘の腸の形に合わせてわき腹をさする、1の字マッサージを考えて毎日浣腸する時にやっていました。

生活リズムがしっかりしているとうんちも決まった時間に出やすいと聞いて、毎日時計とにらめっこしながら規則正しく生活しました。(うんちは出ませんでしたが、娘は過ごしやすかった様であまり愚図らなくなりました。)

10か月を過ぎても出ないままだったので、先生から、他の病気の可能性があると言われ、1歳になる直前に検査をしましたが、結果は陰性。

結局、1歳を過ぎてすぐのころ、病気でないなら、と試しに浣腸の回数を減らしたところ、急に毎日出るようになりました。

約1年ぶりに浣腸せずにでたうんち。

嬉しくて、その場ですぐ夫に連絡しました。

便秘の解消と浣腸いらずの毎日

その後も毎日しっかりと出るうんち。1日4回出る日もありました。

娘はもうすぐ1歳6か月。浣腸はもう5カ月以上使っていません。

急に出るようになったため、自宅の棚にはまだ開いていない浣腸液の大きなボトルが3つも残っています。

便秘をしていた時期に、水分や食物繊維を摂るため、野菜や果物をたくさん与えていたせいか、肉や魚よりも野菜や果物が好きです。

娘の好みを分析して、たくさん食べられるようにしたため、ファミレスのお子様プレートを完食してしまうくらい食欲旺盛!

同じくらいの月齢の子は、離乳できずに悩むことが多いようですが、娘はたくさん食べるので、10か月で離乳してしまい、早すぎるのではないかと逆に不安になるくらいでした。

(離乳しても体重は減りませんでした)

 便秘のためにやっていたことが、便秘解消とは別の方向で、娘にとって良い影響を与えてくれていました。

生まれつき病気をもち、生後6日で手術することになった時、便秘に悩み、不安を抱えていた日々。

とてもつらいことが多かったですが、その時の行動がすべて、今の健康で元気いっぱいの娘を作っているような気がしています。

先生が「赤ちゃんの便秘はちょっとしたきっかけで急に治る!心配いらない。」そう言ってくれたことで、私は、心に余裕をもって、娘のタイミングで便秘が治るのを待つことができました。

赤ちゃんの頑固な便秘で悩んでいるお母さん。

ぜひ考え方を変えてみてください。

「赤ちゃんの便秘は、治すのではなく、努力しつつ、治るのを待ったらいい」と。

一人で悶々としていては、いつまで経っても不安なままです。

もし、まだ受診していないなら、病院に行って、一度みてもらってください。

病気が隠れていた場合は見つけてもらうことができますし、何も見つからなくても、医師の「大丈夫!」という言葉が聞けただけで安心しますよ!

娘と同じ、腸回転異常症の赤ちゃんをもつお母さん。

原因なんて関係ありません。

手術の跡は、時間が経つほど薄くなっていきますし、今、娘は元気です。

病気をもっているなんて、親である私が忘れてしまいそうなくらいです。

主治医の先生や、保健師さんなど、見方についてくれる人はたくさんいます。

聞きたいことはなんでも、何度でも聞いてください。

だれも迷惑がったりはしません。

何度も質問するうちに、自分の中で一番すっきりする答えが見つかるはずです。

この記事を読んで、赤ちゃんの病気や便秘で悩むお母さんが、1人でも救われますように。